リアルタイム巡礼記2016

【巡礼記18~20日目】メセタの瞑想の道を行く。旅は目的ではなく手段だ

みなさんこんにちは、たまゆりです!

 

現在わたしはゴールのサンティアゴデコンポステーラまで350kmを切った、レオンという大きな街にいます。

 

昨日はスペシャルデー(?)ということでレオンにあるスペイン国営五つ星ホテル・パラドールに泊まっていたのですが、今日は同じレオンにあるアルベルゲに泊まっています。

 

 

ここしばらく日記を書くのを完全にサボっていましたので、その間の特に印象的だった出来事や今思い出せることを書いてみたいと思います。

 

 

5/27【巡礼18日目】
カリオン・デ・ロス・コンデス〜テラディジョス・デ・ロス・テンプラリオス
歩行距離 26.4km

 

5/28【巡礼19日目】
テラディジョス・デ・ロス・テンプラリオス〜ベルシャノス・デル・カミーノ
歩行距離 27.1km

 

5/29【巡礼20日目】
ベルシャノス・デル・カミーノ〜レリエゴス
歩行距離 24.0km

 

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この辺りの区間は「メセタの台地」と呼ばれていて、今までの起伏に富んだ麦畑の景色と違って、ひたすら平坦で車道と並行した道。

 

正直いって、つまらない!退屈!歩きながら暇!!!
今までは、アップダウンがあってきつかったぶん、少し進めばどんどん違う景色が見えてきたり、見渡す限り麦畑と野花しか咲いていなくて、自分以外には誰もいないような道を通っていたから、ただ歩いているだけでいつだって飛び上がりたいくらいに楽しかった。

  

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でもこの区間は、ひたすら、時折横をビューンと通り抜けていく車を見送りながら、どこまでも単調で見渡しのない景色の中を行く。巡礼者の中にはバスを使ってこの区間はスキップする人も多い、と聞いた。

 

こちらで友達になったチェコ人の男の子やデンマーク人のヤコブは、この道は「メディテーションの道=瞑想の道だ」と言っていた。だから必ず1人で歩くんだよ、と。
ずっと変わらない単調な景色の中をひたすら歩くことで、ただただ自分の中の内なる自分と対話する時間なのだと。

 

私にとってこの道はそうだったのかしらん。あまりよくわからない(笑)

 

時には、もーやだー!!!なんでこんな退屈な道を作ったんだ!!!ばかー!!!車のばかー!!!排気ガスのばかー!!!カスティーリャデレオン州のばかー!!!スペインのばかー!!!と1人で誰かのせいにして、叫び出したい時もあった。もうどこかでバスに乗っちゃおうかな、と何度も何度も思った。

  

それでも、ひたすら足を前に進め続けて、このレオンという街へたどり着いた。
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その間、確かに、本当にたくさんのことを考えたなぁと思う。
例えば、日本に帰ってからのこと。日本にいた頃の自分のこと。今まで好きになってきた人のこと。昔大好きだったマンガのこと。小さい頃のこと。中学生くらいの頃のこと。ずっと忘れていたような、昔好きでよく聴いていた歌をかたっぱしから口ずさんたり。とりとめもなく色んなことを考えていたな。

 

たぶん、人生のうちで、こんなにも自分の頭の中で何かを思い出したり考えたりすることはないんじゃないかっていうくらいに。だって、なにせ暇だからね!笑
前を向いたまま転ばないように、歩きながらできる暇つぶしといったら、自分の頭の中にある引き出しを、かたっぱしから開けて行って記憶を眺めてみることくらいしかないんだもの。

 

そう、だから彼らはこの道を「瞑想の道だ」って言ったのかな。私にとっては、瞑想なんてちゃんとしたものじゃなくて、頭の中の整理整頓・大掃除の時間だったのかもね。

 

 

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そしてもうひとつ、単調な道を歩きながら考えていた大切なこと。

 

私はここにきて新しい人生を生きているみたいだと思う。
ここに来るまでの自分がどんな風だったか、忘れてしまっていることにふと気付いた。
日本で暮らしていた頃の自分のことが別人みたいに、そしてそれがとても遠い昔の出来事のように思える。まるで前世の記憶みたいに、微かにしか思い出せない。

 

この道を「再生の道」だと色んな人が言うのを本で読んだ。本当にそうだ、と思う。
スタート地のサンジャンピエドポーに着いた日、私は新しい人生を始めるような気持ちでこの道を歩き始め、事実生まれ変わったみたいな新しい自分で、毎日を歩いている。

 

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そして、この道を歩いていると、スペイン人、フランス人、ドイツ人、オランダ人、アメリカ人、イタリア人、韓国人、スウェーデン人、中国人、デンマーク人…本当に毎日いろんな国のいろんな年代のいろんな考え方のいろんな行動様式を持った人と出会う。

 

でもこの道にいる人は、みんな根っこにおんなじ自然な親切の心を持っている。朝そのアルベルゲで出会って、初めて挨拶を交わす人とでも、おはよう、元気?よく眠れた?足の調子は大丈夫?と声を掛け合う。
そして道端に立ち止まっていると、大丈夫?何かあった?何か助けてあげられる事はある?と聞いてくれる人がたくさんいる。

 

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そうだ、本当はずっとこんなふうに生きたかったのだ、と思う。
私は自分が日本にいる時、どれだけこの「目の前の人にただ優しくありたい」という軸を自分で否定して、本当はどうでもいいことばかり気にして生きてきたんだろうと思う。

 

そうだ。こんなふうに生きたかったんだ。
出会う人を誰も傷つけなくていい世界。出会う人みんなに微笑みを投げかけて、優しい声をかけて、その人が本当に幸せであればいいと願うことができる、そんな世界。そうすることが自分自身のなによりの幸せになるのだと、この道の上にいる人はみんな知っている。

 

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単調な道に疲れて冷たい雨に降られて、つい自分じゃない誰かに恨み言を言いたい気持ちになった時、何度も何度も巡礼の仲間やアルベルゲのオスピタレロさん、バルのご主人に助けられた。笑顔、優しい手、優しい眼差し。時に、あたたかなハグ。小さく狭くなってしまいそうな私の心に、あったかなものを注いでくれた。

 

 

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このサンティアゴ巡礼道に来る前、パリのノートルダム寺院に行った。
その時、祭壇の向こうに西日が透けて見えるステンドグラスのまばゆい光を見て、ああ、本当はあの光の中の世界みたいに、誰もが幸せに、誰もが人に優しく生きることができる世界があるなら、それはどんなに幸せだろうと思った。

 

本当はみんなそんなふうに生きていきたいはずなのに、誰もが自分以外の誰かの不幸を願うことなんてないはずなのに。本当は誰のことも傷つけずに生きていきたいはずなのに。
なぜならば自分の目の前にいる他人、自分以外の全ての人、その幸せを願って生きることこそが、自分自身の1番の幸せだから。

 

この道を歩く人は、みんなそのことを知っている。
私が理想とする世界のあり方が、この道の上にはあると思った。

 

 

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そして私は、この巡礼道の上で生きた私の生き方を、日本にも持ち帰れるだろうか、と思う。
できるだけたくさん、そのまんまで、この一瞬一瞬の過ごし方を、持ち帰ることができればいいと思う。

 

 

そう、どんなにこの道がすばらしくても、大好きでも、ずっと歩き続けることはできない。あと何十日もしたら、ゴールのサンティアゴデコンポステーラに着いてしまう。

 

そしてわたしは日本人で、犬山人で、そこには一番大切に、幸せにしたい家族や身の回りの人や友人たちがいる。愛する土地がある。
いくらこの道がすばらしくても、ここはわたしの生きていく場所にはならない。自分と自分の周りを幸せにできないで、べつの世界を幸せにすることなんてできないからだ。

 

今のわたしが生きていくのはわたしが愛する人々がいる場所。わたしが愛すべき人たちが暮らす場所。
その場所で、私そのものが透明な媒介になって、この道の上で心に刻んだ、人々の生き方を体現してゆくこと。自分の家族、身の回りの人を大切に、愛して、その人たちに幸せを振りまきながら、振りまきあいながら生きること。
それがわたしのしたいことだ。

 

だから、たくさんのものを持ち帰るために、私はこの道を、限られたこの旅の日々を、めいっぱいに大切に歩きたい。
そんな風に思える旅は、私にとって初めてかもしれない。旅そのものが目的なのではなく、旅から自分の生きる土地へ何かを持ち帰るための旅。
私にとって、旅は目的ではなく手段になった。自分と自分の身の回りを幸せにするための手段。

 

それはとても嬉しいことだと思う。たくさんのものを持ち帰ることができますように。

 

 

さて!!これからもういっちょレオンの街に繰り出して、美味しいものを食べてきます!
それじゃ、また!たまゆりでした。

 

 

つづきはこちら!

 

 

 

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