リアルタイム巡礼記2016

【巡礼記27日目】銀河の野原をゆく。黄色い矢印がなくなっても歩き続けたい

6/7【巡礼27日目】
オ・セブレイロ〜トリアカステラ
歩行距離 24.5km

 

夜中の1時。体が熱くて目が覚めた。
お酒を飲みすぎたせいで、寝汗をかいていたみたい。
トイレに行くために部屋を出てから、ふと思い立って、外のテラスに出てみることにしました。

 

すると……見えたのは、真っ暗な空に浮かぶたっっっっくさんの星!!!!!

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本当に初めて見るような夜空でした。
オセブレイロの村は、深い山の真ん中のてっぺんにあって、見下ろしても、小さい村の灯りがぽつん…と見えるだけ。

しかも、この日はたまたま新月の夜だったみたいで、本当に周りは星明かりだけ!

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ゴールのサンティアゴデコンポステーラの方角に向かって(た、たぶん!)天の河が伸びています。
中世の時代の巡礼者たちは、この天の河とランプの光だけを頼りに夜も歩いてサンティアゴを目指した、と本で読んだことがあります。
なんだかその時代が思い起こされるようで、感慨深い気持ちでしばらく星を眺めていたのでした。

そのあと、部屋に戻ろうとすると、ザックを担いでトレッキングシューズを履いた姿の、スペイン人の男性がやってきた!
話を聞くと、同じ部屋の人のいびきがうるさすぎてどうしても眠れなくて、部屋にいるのも我慢できないから、もう出発することにした、とのこと。まだ、夜中の2時!
平坦な道ならまだしも、ここは灯りのない山の上で、この先は下り道。危ないよー!とも思ったけれど、彼の意思はとても固そうで、気を付けてね、裏のドアを少しだけ開けておくから無理そうなら戻ってきてね、と言って彼を見送った。

彼は去り際にこう言った。
「この道を歩いていると、ぼくは時々神様に導かれているんじゃないかと思うことがある。奴らのいびきがうるさかったおかげで、ぼくはこんなにも美しい星空の下を歩くことができるんだ」と。

 

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私も同じことを、何度もこの道の上で思った。きっと神様に導かれているんだ、って。
すごい雨に降られて、寒くて震えて落ち込んでいたら、天使みたいにすてきな人に出会えたり。足が痛くて疲れて歩けなくて、ゆっくり歩いていたら、すばらしい景色に出会ったり。
そう、この夜だって、あんなに飲まされていたから(笑)こんなに美しい星空と、この星空の美しさを共有できる、すてきな人に出会えた。

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出会う人も、見える景色も、花も雲も雨も、出会うものすべてが、天使なんだって思います。神様に遣わされた天使なんじゃないかって。
そしてそのすべては、私が一瞬一瞬の選択を、私自身の心に従ってしているからこそ出会った人たち、ものたち。

ということは、もしかして、人がそれぞれに持っている心や直感は、生まれてくる時それぞれに授けられた、”プチ神様”みたいなものなんじゃないかって思う。

 

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運動もロクにしたことないのに、突然「サンティアゴ巡礼をしたい」と言いだした私の心。
最初は、いやいや、無理だから、言葉も通じないスペインを800km歩くってありえないから、しかも2ヶ月間とか仕事休めないから、と無視していた。でも、その声を無視し続けて、私はいつの間にか生きる意味さえ見失った。

一度どん底まで落ちてから、初めて、心の声にちゃんと向き合ったのがちょうど1年前。去年の5月。
もう生きていても楽しくない、死にたい、と唱え続けた1年が過ぎても、まだ私の心は「サンティアゴ巡礼に行きたい」と言っていた。

「そうか、それじゃあやってやろうじゃん!サンティアゴ巡礼!」そう決めて、サンティアゴ巡礼に来るという夢に向かって走り出してから、本当に私は変わっていった。生きていることに、生まれてきたことに、今ここにいることに、家族、友人、出会ってきた人たち、自分自身、すべてに感謝して生きられるようになった。

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そして夢を叶えてこの巡礼道にやってきた今、私は現在進行形でものすごい体験をしている。

自分自身の心の声こそ、神様の導き。自分の心の声は、自分の中に住むプチ神様の声。
この道を歩き始めて、より一層そう思うようになりました。

 

私の好きな、よしもとばななさんの「花のベッドでひるねして」という小説の中に、主人公のおじいちゃんのこんなセリフが出てきます。

「よく考えて、肚に聞いてみなさい。景色をよく見て、目を遠くまで動かして、深呼吸しなさい。そして、もしもやもやしていなかったらその自分を信じろ。もやもやしたら、もやもやしていても進むかどうか考えてみなさい。そんなもの、どこからでも巻き返せる。」

この言葉に私はよく助けられます。
どちらの道を行くか迷った時。自分の直感が働かなかったり、自分の心が見えなくなった時、それでも何かを選ばなくちゃいけない時。もやもやしていても、進む。そんなのどこからでも巻き返せる。生きてさえいれば!

1年前、どん底にいたとき「もう死にたい」って言った私に、「命さえあればどうにだってなるから」って泣きながら言ってくれた母を思い出す。そうか、あの時母が言っていたのはきったこういうことだったんだ。
どこからでも巻き返せる。

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だから、歩き続けよう、って思ったのです。
もやもやしても、たまに心を、自分の中のプチ神様の居場所を見失ってしまっても。それでも歩き続けていれば、巻き返せる。どこからだって。

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もう、ゴールのサンティアゴデコンポステーラまではあと100kmちょっと。あと1週間もしないうちに、私はゴールに着いている!うそみたいだ!日本にいた時、あんなに遠いと思っていた場所に着こうとしている、今。

この道が終わっても、導いてくれる黄色い矢印がなくなっても、私は私の人生を、歩き続けて生きていきたい。そう思います。

 

そうだった!日記の途中だった!笑

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このあと、私もベッドに戻ったら、星空が焼き付いてなんだかドキドキしちゃって眠れなくなっちゃったから、しばらく考えたあと、心に従って、私も着替えて荷物をまとめて、次の町へ向け出発することにしたのです。

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朝4時。まだ真っ暗な中を、ヘッドランプの灯りを頼りに、たまに立ち止まって天の河を眺めながら、進んでいく。
周りは風と木のざわめく音だけで、ライトを消すと見えるのは星明かりと木の真っ黒な陰だけ。
少し怖くなってきて、やっぱり引き返そうか迷ったその時、後ろから懐中電灯の灯りがふたつ見えた。

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やってきたのは、イタリアのトリノから来たというおじいちゃん2人。
1人で来たのか、大丈夫か、と聞かれ、やっぱり怖いからもう戻ろうか迷ってる、と言ったら、大丈夫だよ、ついておいで、と言ってくれた。

前を歩く2人についていく。灯りが3人分になって、とってもとっても心強い。
イタリア語で色んなことを話しながら、うっすら明るくなり始めた山の上の道を一緒に歩いていった。

彼らはいつもとても早起きで、毎日この時間にアルベルゲを出て毎日30km以上の道のりを歩いているタフなおじいちゃんたち。彼らより遅い私のペースに合わせて、日が昇って明るくなるまで一緒に歩いてくれたのでした。

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朝焼けがよく見える展望所で、2人の連絡先を教えてもらって彼らと別れた。

 

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そこから先は、美しい景色に目を奪われながら、そして寝不足でフラフラしながら(笑)山のふもとのトリアカステラという街に到着したのでした。

この日もグスターボやヒロくんたちと一緒に夕食を食べて(またチュビートも飲まされて笑)、眠りにつきました。

 

翌日につづく!
ここまで読んでくださってありがとうございます。

たまゆりでした!

 
つづきはこちら!

 

 

 

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